森の散歩

アクセスカウンタ

zoom RSS 『トランスパーソナル心理学入門』

<<   作成日時 : 2017/07/29 08:03   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

講談社現代新書。2014年10月16刷発行。諸富祥彦(もろとみよしひこ)著。教育学博士だそうだ。

『腰痛は怒りである』に、トランスパーソナル心理学の権威ケン・ウィルバーというのが出てきたので調べてみることにした。大体大概の医者でも接骨医でもマッサージ屋でも、神経が圧迫されたから痛みが生じるなどと訳の分からないことを言う。圧迫されて一部壊れるならその場所に痛みが生じるはずだ。単に押されているだけなら、電流の通りが悪くなるだけで、別段痛みなど生じるわけがない。それなのにまず大概が、ヘルニアなどで神経が圧迫されるのが原因で痛みが生じるなどと無条件に語る。しかも坐骨神経痛で脚がしびれるのは腰のヘルニアや骨による圧迫が原因だなどと当然の様だ。人間の身体だから電気のコードとは違うが、コードはコードである。被覆が壊れてショートしない限り、電流の流れがちょっとばかり阻害されるだけだろう。電流が流れにくくなるということは、感覚が乏しくなることだ。せいぜい力が入りにくくてふらふらしてくるだけで、痛みやしびれは起こらない。神経とは銅線と比べれば何か神秘めいた働きがあるに違いないが、それでも電流がせき止められて局部に逆流するとも思えない。神経が押されるので下流に痛みが起こるというのは、よほど単純で神聖な人物でなければ無条件で受け入れられるものではない。

心理学にしろ宗教にしろ、一般概念として普及するには、客観世界の存在を大前提としている。客観世界の肯定概念とは、「宇宙は一つ」という思考である。この点が私の概念とは大きく異なっている。しかし、この事は置いておくとするが、なぜかあまり問題視されていないようである。

トランスパーソナルとは、「個人としての自分」(パーソナル)を超える(トランス)という意味だ。今までの心理学が自力であったのに対し、自己の外にある他力を主体にした心理学で、第4の心理学に該当するということである。大自然、地球、宇宙全体を自分と同一視する感覚の心理学だ。従来の古い唯物論の持ち主なら頭から排斥するような学問である。もともとは1960年代に巻き上がった「ニュー・サイエンス」が引き金になったものらしい。ボーアの太極図を見ても創造が付くが、現代日本ではむしろ理科系の人間のほうがすんなり溶け込めそうな感じだ。逆に文科系、特に政治畑の人間は、がちがちの個人主義だ。理科系でも、政治にかかわりのあるものはダメだ。元来政府はすべて悪であることがわかっていないようだからだ。

トランスパーソナルは、マズローの人間性心理学の発達のプロセスの中で生み出された第4の心理学だという。第1が行動主義心理学。一般の科学的唯物的分析で、大概の医療機関はここまでだ。第2が深層心理学(力動心理学)。フロイト流の精神分析だという。そして第3が人間性心理学だ。

大変興味深いのは、「トランスパーソナル心理学は、一般常識からすれば理解不可能な不思議な体験や外から見れば精神病のように見える兆候も、実は深い魂の成長(スピリッチュアル・イマージェンス=精神性の出現)の兆候である、と考える心理学である」という定義だ。だから今まで非科学的な迷妄だと退けられてきたクンダリーニの覚醒とやらも否定しない。実際のところ、腰痛をはじめとした各種筋肉痛の解消にはこの心理学が臨床的に効果を発揮しているようである。すべての衆生に対し、この理論は当てはまるようだというのが不思議なところだ。縦方向の個人的な魂の成長だけでなく鵜、横方向の生命体のつながり―岩石や宇宙全体のような無機質でも新しい心理学にあっては生命であうといえる―を重要視する。ユングの集合無意識に近い概念だと思うが、無機物との調和合体を目指す。新しい科学の展開といえるが、100年も続いてきた唯物論的科学概念が一夕に改まるわけもない。ユングの場合は、あまりに幼児的体験を誇大視したのが欠点だという。

ウィルバーの考えでは、人間の心をその一部として含む宇宙そのものが自己進化している。現代科学の観点からいって矛盾しないが、今では科学に興味のないもののほうがスピリッチュアルといったものを否定する傾向がある。この事は一見奇妙な印象を与える。結局大多数に人間は世間の風聞によって生きているのだ。多くは根拠のないうわさであるが、原子に陰陽の性質があることがデモクリトスの時代からわかっていたという風聞も流行するといつしか定着してしまう。


ウィルバーのように、上昇と下降のサイクルを永久に繰り返す命の流れの図式を、「円環的ライフサイクル」とも呼ぶ。誕生から生まれ変わりのサイクルである。中国宋の戴益の春を探るという詩に「春は枝頭にあってすでに十分」というのがあるが、上昇サイクルの究極の悟りも仏教の求めるものと大体似ている。すなわち、「究極の一者=スピリット」という思想である。ウィルバーはこうした思想が地を覆うには1千年ほどかかるだろうとしているらしい。

筆者の諸富氏は、欧米人と比べて日本人には自我が出来上がっていないものが多いという。確かに自我なんてないものが多いのかもしれない。むしろ、明確な自我を持ち込静的にふるまうなどというのは、日本の保守的な思想からすれば身勝手なふるまいをするものとして恥と捉えられがちであったような気がする。「周囲からの拒絶を恐れるあまり、他者を拒絶するときにもできなくなってしまう。そして、拒絶できないまま我慢を重ねているうち、ついに耐えられなくなり、突然キレて爆発してしまう」という表現には、今時過労死するもの達の主体性のなさと世間に迎合することに生きがいを見出そうとする国民性をうかがわせる。これはまさに開国以来日本と交渉を重ねてきた各国政府、特にアメリカ合衆国が強く抱いた懸念である。いまだに日本人の心根の奥には、世間に埋没することが美徳であるという意識が流れているようでもある。西欧の個人とは「分割できないもの」[individual]というほどの意味だ。そんな概念が日本に生まれる由もない。

魂の心理学の立場から、ヒルマン(*)は、現代人の人生の感覚を狂わせているものとして、トラウマ理論を取り上げ、徹底的に批判しているという。実際、子供時代にどのようなことが起きようと、当の本人の子供には苦悩の影さえないのが普通である。苦悩は子供時代にはなく、子供時代の記憶を思い出している現在の成人した人物の脳にしかないのである。それは「皆がやっているから自分もしなければいけない」という、あくびや熱中症と同じようなものである。本当にあくびをしたり熱中症にかかったりしているものなど全体の一部に過ぎない。ほとんどがただの物まねだ。熱中症の8〜9割がたはそのタイプだろう。暑さ涼しさはあまり関係なく、それよりも、やたらとクーラーなど使って無意識の調節力をなえさせているからだろう。扇風機や冷風扇で耐えている方が、発症率自体はぐんと減っていくはずのものである。
(*)ジェイムズ・ヒルマン(1926−2011)。米国ユング派の心理学者。占い心理学の鏡リュウジの訳した『魂のコード』というのがある。人生においてやるべきことは「私を越えた向こう」からやってくるという考え。考えというよりもこれが事実であって、自分の意志で選ぶというのは錯覚である。

過去物語ではなく、未来から啓示がやってくる例として、ヴァイオリニストのメニューインの言葉を筆者は上げている。「私の天職は4歳の時にはすでに分かっていた」。時間は未来に向かって流れるだけでなく、過去へ向かっても流れている。ヒルマンはこうしたことを「運命の守護霊(ダイモーン)」の導きだとしているようだ。人生にはそうしたホールが開いているものだろう。

如何にも気に入ったのは「人間の心、魂は、時によっては明るさや光よりも暗さや闇の方を好む」という表現だ。むしろ暗さや闇のある一見無駄な時間が人間の心や魂の成長には不可欠のように思えるそうである。明るさばかり追いかけていて、暗さから逃れてばかりいるもの達に碌なのがいないという事実を見れば、断言してもよいものだろう。夜の闇がなければ昼のありがたさがわからないのと同じである。ありがたさがわからないからとんでもないゴミばかりに固執する。外物には不浄が多い。

トランスパーソナル心理学入門 (講談社現代新書) [ 諸富祥彦 ]
楽天ブックス
講談社現代新書 諸富祥彦 講談社トランス パーソナル シンリガク ニュウモン モロトミ,ヨシヒコ 発


楽天市場 by トランスパーソナル心理学入門 (講談社現代新書) [ 諸富祥彦 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル





吉福伸逸の言葉 トランスパーソナル心理学を超えて追及した真のセラピ [ 向後善之 ]
楽天ブックス
トランスパーソナル心理学を超えて追及した真のセラピ 向後善之 新海正彦 コスモス・ライブラリー 星雲


楽天市場 by 吉福伸逸の言葉 トランスパーソナル心理学を超えて追及した真のセラピ [ 向後善之 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル





和尚(ラジニ-シ)の超宗教的世界 トランスパ-ソナル心理学との相対関係 [ 玉川信明 ]
楽天ブックス
トランスパーソナル心理学との相対関係 玉川信明 社会評論社ラジニーシ ノ チョウ シュウキョウテキ


楽天市場 by 和尚(ラジニ-シ)の超宗教的世界 トランスパ-ソナル心理学との相対関係 [ 玉川信明 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『トランスパーソナル心理学入門』 森の散歩/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる