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zoom RSS 働くことの意味

<<   作成日時 : 2011/11/13 15:47   >>

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10年や20年前と比べると、近年働くことの義務感を感じている人というのは少なくなってきたように思う。それでも、『生活に必要不可欠な分量以上の労働は人間性を破壊し、社会を荒廃させるのではないか』ということにまではなかなか思い至っている人は少ないようである。長年にわたって、「世界一暮らしやすい都市」として知られるミュンヘンなどと違って、いまだ日本には「有給を消化しなければ罰則を課す」などという規定もないから、土日に労働を働いて社会を擾乱させている輩が多い。盗みを働く行為とちょうど逆で、労働も一線を越えると犯罪と変わらなくなる。

ギリシャの例を見ればよく分かると思うが、国民がまともに働かなければ、あれくらい贅沢な暮らしを続けていても、一世代以上も国家は破綻しない。「働かなければ生きてゆけない」という強迫観念が如何にひどい思い違いであるかということがよく分かるだろう。

機械技術は人間の魂を貶め、真理について考えたり、徳を実践するにはふさわしくないものに変えてしまう。だからそういう不浄なものには極力近づかないでいることが正しい人間であるためにはぜひとも必要であるというのが、ギリシャの思想家たちの共通する考え方であり、それはたぶんに現在のギリシャ市民の真情でもあるのである。ただ食べるために必要な農業や漁業だけを除いて、他の総ての労働はただ単に不浄で忌まわしいものに過ぎない。それは人間の特性をゆがめるものだ。人間の獣性を呼び起こす悪魔的存在に過ぎない。

それは「ホモ・ファーベル」で、ティルゲル(1887−1941)が以下のように述べていることにも現れている。・・・
「ギリシャ精神が労働を、出来ることなら他人に丸投げしてでも避けるべき、うんざりするような労苦だと感じていたということは、一般的な経験およびヘレニズム世界観の当然の結果である。ギリシャ人にとって物や物体という外界は、始めも終わりもなく、絶え間ない永遠の、むなしいときの推移の中で、自分の上を絶えずぐるぐる回転しながら、現れては消え、生まれては死に、出来上がっては朽ちてゆく現象の果てしない生成の繰り返しである。・・・外界という絶え間なく荒れ狂う嵐の海洋から逃れ、独自の魂の奥底に引きこもり、変化を回避して不変の自分探しに没頭すること、これこそ、ギリシャ人が〈生〉に託した理想であった。だから、精神と現象の世界とを緊密な関係におくような活動は何であれ、ギリシャ人にとっては、可能な限り最小限に減らすべきだし、少なくともすっかり払拭してしまうべき苦痛を伴う屈辱的な宿命に思われたのであった。ギリシャ人にとって、精神にふさわしい対象は真理であり、ギリシャ人は、真理を、精神以前に、精神の外で、また精神から独立して真理自体の中に存在し、時間と変化からまぬかれたイデアの世界であると考えている。すなわち、精神によって認識することはできるが変えることはできないイデアの世界、純粋に見ることを対象とする世界であって、そのお陰で精神は、その対象物に没頭し対象物と一つになるのだ。このような世界観には、肉体労働のための余地はない。魂と物質を混同し物質との接触で魂を汚すことによって、肉体労働はイデアのぢやから魂を遠ざけてしまう。肉体労働は最小限に縮小すべき、出来れば完全に排撃すべき不可避的な悪なのである。」
「人間を不可避的に物質と接触させる労働は、それが奴隷の労働であれ、自由な手職人の労働であれ、徳をその根元から破壊する邪魔者である。『最善の国家であれば手職人を市民にすることはないであろう』(アリストテレス『政治学』)。手職人が優勢を占める国家は、アリストテレスによって最悪と判断されたのでのであった。」
・・・
歴史をさかのぼればルターやカルヴィンのおぞましい教説が始まってから以降になるのだろうが、産業革命期のイギリスでも、独立戦争後のアメリカでも、明治維新下の日本でもそうだった。日本では安田善次郎のようなひたすら勤勉な男の生涯が修身の教科書にまで載せられて頑是無い児童達を啓蒙してきたが、それは単なる社会的洗脳教育に過ぎないものではなかったのか。アメリカでも、カーネギーの勤勉実直さはいまだに人々の崇拝の的らしい。けれども、彼らの勤勉のお陰で、今の地上の世界が経済一辺倒の人間味のない空しいものになったということも忘れるべきではないであろう。

ソフトバンクの孫社長が、先日他界したアップル社のスティブン・ジョブズ氏(1955−2011)をたたえて「ダ・ヴィンチと並ぶ偉大な人物として歴史に残るだろう』などといったらしいが、ジョブズ氏の行なったこともまた人間性の破壊行為に他ならなかったのではなかろうか。ネット産業の蔓延する中で、スマホ歩きをする正体のない人間ばかりが巷にあふれるばかりになってきた。要するに、生身の人間をますますゾンビ化させる社会の更新を彼は行ってきたとも言えるわけなのであって、その意味では全くもって賛同に値するものは持ち合わせていなかったわけだ。日本ではほぼ同世代の人として、松下幸之助氏(1894−1989)がこのような人であったように思う。しかし、松下氏は、あるとき禅の坊さんから「気味のお陰で、こんな心がなくものばかりのいやな日本になってしまった。君の責任でなおしてもらわねばならぬ」といわれて、一念発起して松下政経塾などを建てる事ができた。だから、詳しいことは知らないが、それなりに反省はしていたようだ。その点では運のよかった人だということはできる。けれども、ジョブズ氏の場合(*)は、おそらく長生きをしていたところでアメリカ社会で彼を叱責するような人物は現れなかっただろうが、自省の心などいっさいないままに他界してしまった。アメリカの正義とはそのようなものでしかないのかもしれないが、そこが憐れではある。やや時代はさかのぼるが、ジョブズ氏に近い少し腹黒いタイプの人としては、岩崎弥太郎(1834−85)とか、正体がわからないタイプとしては坂本龍馬(1835−67)なんていうのがある。

(*)ためしに、ジョブズ氏についてネットで調べてみたら、賞賛に値するどころか、その正反対で、まず「上司にしたくない男ナンバーワン」みたいなタイプで、なぜこんな道徳性のない独裁的でわがままな人間が他人を利用することができたのか全く不思議というものであって、まさにヒトラー(1889−1945)がなぜあれほど人気を集めたのかという疑問と非常に似通ったものがあることを感じた。ジョブズ氏の独創になるものは実際には極めて少なく、多くは他人の手柄によるものであって、あたかも自分が考案したかのように吹聴していただけであったというのが真相であるらしい。失敗したプロジェクトのメンバーには「お前らは屑だ」と平然と口にし、相手が泣き出したとしても大声で罵倒をやめなかった。ちょうどヒトラーのように、相手が弱ければ弱いほど自己陶酔に浸るタイプだったのだろう。契約不履行で訴訟を起され、多額の賠償金を支払わせられるということもしばしばだったという。常日頃の口癖が「世の中は賢人と馬鹿しかいない」であったそうだ。こういう人間に夢中になるというのだから、如何に世の中が札縛としているかということが推し量れる。特に、孫正義のような人物がこうした悪魔のような男に賞賛を与えていることは全く理解できない。私には「現代のヒトラー」のような魔物にしか見えない。くしくもヒトラーと同じ56歳でこの世を去っているところも、ヒトラーの生まれ変わりのようなものを感じさせる。


先進国の歴史などというものは、経済成長第一で、そんなものが人間の幸福と直結するものではないことぐらいは、小学生や中学生はもちろん、高校生でもほとんどが分かっているのだろうが、大学生ぐらいになると『何だかな〜!?』というのが少し増えてくる。社会人になると、『経済成長のある社会こそが好ましい』などと無条件でそう信じ込むようなものの割合のほうがずっと多くなってくる。別段、それで世の中が明るくなって、人間が暮らしやすく、幸福になってきたというならそれでもよいように思うが、現実はあまりぱっとしないどころか、経済成長すればするほど人間は機械みたいになってゆく。「賢人と馬鹿しかいない」などというふうに、人間を「0で無ければ1」のようにデジタル式に分けるなどとは、実に浅はかな考え方だ。


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貧富の差というものは、もちろん経済発展以前からあったことだが、何か社会発展という目標さえ果たせば貧困が合理化されるというか、現在よりも貧困なものが生まれたとしても、それは近代化の生んだ‘よい貧困’であるから許容されるといった風潮がある。よい貧困も悪い貧困もない。言葉の文のようなものだ。

(11.16日追記)釈尊なども、教団には労働による生産一切を禁じたということは注目される。やはり、人間性を失わせる毒素というものが労働本来の内部に潜んでいるからだろう。考えてみれば、実に恐ろしい魔物であった。

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