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zoom RSS 心が折れるという言葉

<<   作成日時 : 2014/02/17 22:55   >>

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新聞に「心が折れる」と書いてあった。どうも意欲が消滅するというような意味に使っているらしい。やや心外で不愉快な響きがする。誤用ではなかろうかと思って調べてみると、案の定元来の意味は、「相手の思っている方向に心を傾けて受け入れる」といった意味合いだったようだ。2000年代に入ってからスポーツ選手が多用するようになってから使われだしたという。いわゆる「筋肉バカ」といわれる種類の人間の間で普及したものだ。「肉体は強靭だが、心のほうは詳細で細かなことにも心配りが効く」というような、体力に秀でたものが使えばバランスのとれた肯定的な人間像といったものをイメージさせるものであったはずだ。しかし、それを虚弱な人間が用いると、いかにも歪んだ人物であるかのような悪印象しかもたらさなくなる。

同じような言葉で「ガラスのハート」などというのがある。これも、「筋肉バカ」といわれる人間が「俺は実はインテリなんだ」という意味を含ませて用いるから、そういう理屈に合わない文句を言われても腹が立たないのであって、ひ弱なもやしが口に出したのでは「どうしようもない役立たず」というニュアンスしか醸し出さない。「こいつは負け犬だ」という情けないイメージだ。自分でダメ人間の烙印を押す人間失格タイプの嫌なやつだ。


さらに語源をさかのぼると、多少憶測の域を出ないが、「足や腕の骨は折れても心が折れることはない」という至極まともな表現が転じたものらしい。そういう表現を繰り返しているうちに、相手を無傷で打ち負かす法として、「骨を折らずして心を折る」という流れに至るのは必定だろう。孫子の「戦わずして勝つ」に通じる考え方だ。心を折れば勝てるというわけである。特に相手を傷つけたくない場合は実戦でもそうした作戦をとるのが賢明だ。

すなわち、元来は「機先を制して勝つ」という積極的な意味合いだったものが、軟弱な世相を反映して消極的で受動的な意味合いに転じたところに、理屈に合わない異様な不快感を覚える原因があったのである。

そのように考えてゆくと、心を折るという言葉のもとは意外に古く、江戸時代以前の剣豪あたりに見出せそうな気がしてきた。宮本武蔵が伝巌流島の決戦で佐々木小次郎相手に用いた作戦など、まさに「心を折る」あるいは「心を砕く」というものではないだろうか。しばらく考えているうちに、「灯篭斬り」という剣法のあったことを思い出した。「灯篭の石に念を通じれば刀で灯篭をも真っ二つにできる」というものだ。念とは今の心の動きをさす言葉だ。灯篭の石が持つ心の動きよりも先に念を通じるとは、石の心を折るとか砕くということではないか。戦う前に心を封じれば必ず勝てるということだ。無生物には、いったん心を与えておいて、その心を先回りして打ち砕く。そうすれば石を斬ることができるのだと思う。

灯篭斬りは武蔵よりものちのことだったろうか、よくわからないが、武蔵より前になると、神韻縹緲としているのは塚原卜伝あたりになるのだろうか。卜伝あたりになると、「心を折る」、「心を砕く」というより「心を読む」というニュアンスが強くなっていくのかもしれない。それとも禅宗の和尚なのか。正念相続で並み居る剣豪を倒したという話はかなり残っているようだ。あれも機を先んじて勝つのだろう。神羅万象の感じる時の流れにはそれぞれ長短がある。人間感覚論理ではそのうち生物的時間のみしか認識できない。であるから、よもや石に心があるとは思えないだけなのだろう。こうした物理学的錯覚を絶つこともまた人として大事な心構えだと思う。刀は20年も30年も修業を重ねてようやく斬り方が会得できるものだという。昔の軍隊ではサーベルや銃剣は役に立ったが、日本刀は何の役にも立たず、ただの飾りのようなものだったという。素人が振り回すだけでは刃こぼれを起こすだけでまるきり斬れない武器を持つというのは、統治する役人側から見れば極めて重宝な武器である。しかるに数十年も鍛錬を積み重ねた平凡な武士が刀をとれば10人や20人斬った程度では刃こぼれなどするわけがない。拳銃などよりも断然安全な武器だ。




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○さて今年も午前中に確定申告を済ませた。提出だけだから、30秒ほどで終わる。税務署に通じる歩道前の雪が大分残っていたが、ほかはきれいに溶けていたのが妙に心に残る。何かの象徴だろうか。一律に支払う義務があるというのがどうもおかしい。払いたい者のみが支払って、その分特権を得るというのが正しい在り方ではないだろうか。



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