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zoom RSS 『炎の韋駄天戦隊―ミッドウェー囮作戦』を読んで

<<   作成日時 : 2015/05/17 10:19   >>

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一応歴史群像シリーズに入ってはいるが、多分たいていの人は嘘だと思うだろう。戦争当時の話というのは、今どきならありそうもない話ばかりだからである。そう思ってただの歴史本のつもりで取り寄せたのが失敗のまきであった。学研の歴史群像新書シリーズの一つなのだが、折り込みのチラシに「2015年、戦艦大和が復活」などという完全SFものが乗っている。歴史群像などというからすっかり史実だと思って注文してみたら、史実に忠実に書かれているわけでもなさそうだ。UFOなんかよりは大いにありそうな話に思えるものの、どうもそういう話などなかったというのが7割方だ。どの辺まで本当なのかさっぱりわからない。まあ、歴史は解釈の問題だから、何事も史実であったといえなくもない。しかし同時に見方を変えれば、そんなことはなかったという史実も成立する。現実の世界でもそれは同じだ。事実であったりなかったりする。

実際に中身を読んでみると、最初は史実を調べようというつもりだったのが、どうも様子がおかしい。ただの物語のような感じだ。実際はミッドウェー基地をあらかじめ駆逐艦部隊が襲うなどという話もない。もっとも、太平洋戦争における史実と確定された部分にしろ、単に日米の資料が合致しているから事実だったとしているだけで、より複数の証人を伴った世界的な史実と比べると信憑性は低い。ソ連の科学技術力が過小評価されるというのも、単に社会主義圏であって西側とは切り離されているため、証人が少なかったからにすぎない。そうして世界の科学技術力というのは、実は1970年代か80年代が最盛期であって、今はもう落ち目なのではなかろうか。マジシャン養成と同じようなもので、大多数の人間が不器用になってきてしまうと、もはや新しいマジックというのは誰も発見できなくなってしまうのかもしれない。

それにしても完全フィクションものだったというのにはがっかりした。内容は次のようなものだ。山本長官の隠密部隊に所属するのは、サンゴ海海戦の後撤退命令に背き、逃走した敵空母を追って痛手を与えた千早正臣大佐指揮下の駆逐艦5隻の部隊という設定だ。トラック等に停泊中、大爆発で5隻の駆逐艦はすべて航行不能に陥り、乗員は全員死亡するという筋書きである。その隠密駆逐艦部隊が大活躍して、ミッドウェイ海戦に勝利するという物語であって、読み物としては面白いかもしれないが、何とも期待外れな本であった。しかし、歴史を知らない子供などが読んだら、ひょっとして本気にしてしまうのではないかという危なっかしい書き方だ。フィクションはフィクションものとして揃えておくべきなのではないかと思いもした。

太平洋戦争の半ばごろ、日本軍は富岳という超大型爆撃機を計画したことがある。中島飛行機の中島知久平が計画し、陸海軍首脳を説得して共同で計画を練ったが、結局終戦前1年で設計段階で計画中止となった。実現していれば日本からアメリカ本土まで往復できるほどの航続距離を持つはずであったが、アメリカ西海岸の諸都市の住民はどこかで秘密をかぎ分けたのか、日本軍の爆撃を恐れて灯火管制を敷いていたところもあったという。しかし、そんなことさえ信じようとしなかったのが昭和の大衆であった。それと同じ臭いをここでも感じる。中島知久平自身が開戦の報を聞いて「これで日本は終わりだ」といったことが記録されていたからだ。航空機の純国産が不可能なことを知っている技術者が、そのような爆撃機の設計を企てるはずがないという思い込みだ。それでこのような話は子供だましの大嘘だとずっと思われていたらしいが、終戦後何十年かたって、正真正銘の設計図が出てきた。

ほかに昭和の終わりころまでその存在が疑われていたものに、爆撃用小型戦闘機搭載の潜水艦がある。なぜか全く等閑に付されていた。日本は20倍も巨大な国と開戦を始めたというまやかしを本気にしているものはいまだ多い。それほど巨大な国に出会ったなら戦争などしようとはしないだろう。現に米国西部7州連合国が「われわれより10倍も巨大な国」と日本のことを評していたのである。そこから推しても当時のアメリカ合衆国全体でも、せいぜい日本の4,5倍の大きさしかなかったということがわかる。戦後詳しいことも調べようとはせず、むやみやたらと戦前の米国は日本の20倍以上の国力を持っていたなどという盲目的な歪んだ教育が行われてきた。その反動か、今では「もう少しで勝てた日本」とか「勝てたはずの日本」などという、これもありそうもない書物が徘徊しているようだ。日本は勝つためではなく、講和するために開戦したのだが、米国製の部品で戦闘機をつくっているのに、その供給が止まるようなことをしたらもうそれだけで講和の可能性はぐんと下がる。


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