森の散歩

アクセスカウンタ

zoom RSS 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』という本をよむ

<<   作成日時 : 2015/09/19 09:19   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

楽天の週間ベスト3とか何とか言うので取り寄せてみた。大体人気のある売れ筋の本というのは、根拠薄弱な妄想の類であることが多い。現実の世界は案外ルーチンワークで夢の実現なんていうことは起こりはしない。アメリカン・ドリームなどといっても、生まれた時点ですでに過半数の人間はただ社会を維持するためのみの存在者であらねばならないことが定められている。ガンジーが『一人にできることは万人に可能』などといっても、本当に万人に可能なのではない。現実の世界が夢の実現を阻んでいるから、現実離れした夢物語がはやる。

純粋な筆者というわけでもなさそうだが、筆者のエマニュエル・トッド氏には、欧州がドイツに操られるという風に見えるらしい。勘違いなどではなく、資料の集め方次第ではそういった方向に動こうとしている世界を想定することもできるという話だと思う。トッド氏の考えでは服従の拒否はフランスでは好ましい概念だが、ドイツでは誹謗されることだとある。実際にドイツがそういう国民性の国田かどうかはわからないと思う。実際の世の中にはこれといった明白な目的などはなく、たらいに張った水にたらした墨滴が描くランダムな水墨画よりは少々ましな程度の整合性を持って自由気ままに動き続けているだけだ。それを各自の解釈で都合よくまとめる。そうすると器量しだいで同調者を複数集めることが可能になる。トッド氏はフランスの人類学者だから器量は十分にあるわけだ。中でも、『われわれの世界はいまやポスト民主主義的で、不平等なのだ』という言葉が印象的であった。世界中どこへ行っても、貧乏人と金持ちの2極化が進んでいる。真ん中が最も多いというのではない。

ドイツ帝国についての懸念よりも、プーチン体制になって以降のロシアの平均寿命の急上昇lと幼児死亡率の低下の話には、いまさらながらだと思うが、かなり驚かされた。というのは、日本では2011年の原発事故の際においてさえも、まだロシアにはチェルノブイリ原発の後遺症が蔓延しているという妙な思い込みがはびこっていたからである。もうそんな現象は大衆であるはずのないトッド氏においてはまったく見られないのだ。裏を返していえば、現実世界というものはここの人間の頭の中で認識されるまでは、あくまでただの事象に過ぎないもので、それゆえ現実世界は人間の数だけ無数に存在するといってもあながち大間違いとまでは言い切れないものだということにもなる。2013年のロシアの出生率は1.7にまで回復してきたそうである。

ドイツ民族の特異性は際立って非合理なところにあり、それは日本社会にも見られる点だという。同様に権威主義的であって、メンタルな硬直性と、リーダーの心理的不安を併せ持つ。

精神構造にそうしたところのある民族というのはただでさえ怖い上に、欧州通貨というのは今やドイツが発行権を握っている。経済圏の中枢はドイツにあるのだ。経済という点から言えば完全にドイツが欧州全体を牛耳っているとも言える。

そうしてこの中央銀行なるものが発行する通貨は、1%の富裕層の下にのみ集まり、彼らの不要な蓄積が経済を停滞させているのだという。彼らが政府を通して途上国に貸し付けた金銭の債務不履行が行われることが経済を停滞させているわけではないという。不思議の国のアリスの話ではないが、勝手に貸し付けておいて困っているものに返済を迫るとは何事かということになるのかもしれない。トッド氏の意見によると、回りがギリシャ人に借金するように仕向けて、彼らの首を従来以上にうまく絞めようとした。高利貸したちは結局そうやってギリシャの国有財産を借金のかたに強奪しようとしている。最初から彼らはそのつもりだったのだ、となる。弁済は義務ではあり、借金の返済に応じないということは法律違反なのであるが、その法律は国家が1%の富裕層のためにこしらえたものである。ユーロ圏の機器を作り出したのは、基本的に、借り手の呑気さではなく、貸し手の攻撃的な態度であったという。まあ、フランス人としてそうした内部事情にも詳しいのだろうが、遠くアメリカや日本から見ると、ギリシャ人がキリギリスに見えてしまうのだろう。こうした観点から見ると、「銀行は必要のないものにしか金を貸さない」(≒貧乏人には金を貸さない)というのも、非常に良心的な行為に思えてくる。

さてこの上位1%の下に富が集まる様子というのを観察していると、それは人為的なものにはまったく見えない。シマウマの縦じま模様のできるさまに似ていると思う。つまり、『チューリングパターン』だ。富の波が純粋の計算法定式に沿って形成されるものとほとんど同じであるということは興味深い。


編集者のあとがきに、「日本人自身もなんとなく日独両国の間には共通性が多いと思い込んでいる」という歴史学者の野田宣雄の文を引用している部分があった。戦後ドイツはむしろ中華帝国に近いそうである。「中欧帝国」の建設を目指すドイツは、周辺国に多大な影響を及ぼしているという点で、中華帝国となんら変わるところはない。文化的にも、日本の建築がどことなく丸みを帯びているのに、ドイツのは大体鋭角的で落ち着かない。第2次大戦中の戦車などを見てもそういうことはいえると思う。なぜああ直線的で角が立っているものを好むのかよくわからない。西洋が日本と大きく異なるのは対称性であって、これは目に見えない思考形態などにおいてもいえると思うのだが、同じ西洋でもドイツを離れると次第に丸みを帯びてくる。ピョートル大帝やエカテリーナ2世があれほどドイツ文化を熱心に輸入したというのに、ロシア文化の鋭角性はそれほどきわだってはいない。

一方で日本のほうも明治維新以来の西欧化政策ですっかり遊び心というものを失ってぎすぎすとただ勤勉になった。それで大方のドイツ人のほうがゆとりを持って暮らしているという有様だ。


「ドイツ帝国」が世界を破滅させる [ エマニュエル・トッド ]
楽天ブックス
日本人への警告 文春新書 エマニュエル・トッド 堀茂樹 文藝春秋発行年月:2015年05月20日 予


楽天市場 by 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる [ エマニュエル・トッド ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル





ビスマルク [ 飯田洋介 ]
楽天ブックス
ドイツ帝国を築いた政治外交術 中公新書 飯田洋介 中央公論新社発行年月:2015年01月 予約締切日


楽天市場 by ビスマルク [ 飯田洋介 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』という本をよむ 森の散歩/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる