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zoom RSS 「633爆撃隊 ラインメイデン作戦」を読んだ。

<<   作成日時 : 2016/01/10 15:40   >>

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「ラインメイデン」とは「ラインの乙女」という意味だが、ナチスが開発をもくろむ、高性能地対空ロケットのことだそうだ。フレデリック・スミスという英国人の著作。1939年にイギリス空軍に入隊したそうだ。本書はノンフィクションだが、やや小説めいたところもある。どの道細かいところは極秘機密であったはずであるから、真相など到底わからないだろう。ペーネミュンデのVロケット基地のほうはかなり有名だが、それでも真相ははっきりしないだろう。

ドイツはロケット新兵器を東部戦線ではほとんど使用していない。西部戦線では逆に新設計の戦車などは使用していないらしい。二次大戦の全期間を通じて、ドイツ軍が投入した軍隊の7割以上は常に東部戦線にあって、それは航空機にあっても同じことだった。それを考えると、これはかなり不可思議なことだと思う。ソ連にロケット砲の技術を盗まれることを恐れていたのかもしれない。ドイツとしては、まさかソ連のロケット技術が自分たちをしのぐほど進んでいる部分が多かったとは思いもよらなかったらしい。

ドイツ本土バイエルン地方ホーヘンシャイムの谷間に建設された地下工場をたたくのだが、1943年も半ばを過ぎたという時期に、出撃するのはエンジンとプロペラ以外はほとんど木製という双発爆撃機のモスキートだ。木製の機体だから、表面使用を滑らかに加工でき、空気抵抗も少ないので、メッサーシュミットでもジェット型が出現するまで、ドイツ軍のいかなる戦闘機も追いつくことは出来なかったという(*)。おまけにレーダーにはあまり捕捉されない。木製戦闘機はソ連軍も好んで製造したというが、こちらはどうも翼以外は戦車のような装甲重視だったらしい。防御が薄ければ、パイロットも乗員も一発でやられてしまう。アメリカあたりだったら製造許可が下りなかったと思うが、考えようによっては、ソ連軍以上の人名軽視だとも受け取れそうである。作戦の成功はアメリカ空軍のB17の大編隊がおとりの役を引き受けてくれたことによるものらしい。モスキート16機に対して、B17は150機以上もあり、犠牲も多かったらしい。
(*)最高速度は、日本軍が終戦直前に試作したジェット戦闘機橘花とあまり変わらないほど出た。攻撃力も強く、戦闘機型も多くつくられたが、やはり最大の欠点は防御力が弱いことだったのだろう。本書には非常に強力で、メッサーシュミット110では太刀打ちできなかったなどとあるが、かなりひいき目のように思う。

大量生産されたということは、この機体が商標の性能緒元以上の性能を発揮したということを物語っているように感じられる。それはおそらくゼロ戦と同じだと思う。大体最高速度や旋回性能などにしても、名人と素人が操縦するのでは恐ろしく違ってくるだろう。肩書きなど当てにしたところで始まらない。全体としてどういう風に操作しやすいかだ。

航空機で機体操作に影響しそうなのは、高高度での寒さというものがある。その点、木製だとずいぶん暖かく、操縦しやすいのではなかろうか。指先がかじかむほど機内が冷えていては、反応が遅くなって、当然それが航空機全体の性能の劣化となって表れる。金属製であると、温度が低下すると機体全体が恐ろしく収縮するため、あちこちのつなぎ目から風が入ってくる場合なども起こりそうだ。しかし木製だと、生体組織の特徴で、乾燥後も水分を少なからず含んでいるため、はるかに縮みにくい。乗員が冷えで弱らないというメリットもあるのか、ドイツ軍の到底到達できない高高度の飛行が可能であった(最高12000メートル、平時9000メートル)が、エンジンが優秀であったのかもしれない。実際、高度1000メートル以下の低空飛行を続けると、暑さで参ったそうだ。単純に考えれば、他エンジンのほうが軸のブレが少ないので、安定して飛んでいられるということだ。単発だと簡単に翼が回転してしまうので、かなりジグザグに進んで、まっすぐ飛ぶということはかなり難しそうだ。ゼロ戦が長距離を飛行できたというのも、まっすぐ飛べたということが相当関係しているはずだ。

「どのニュース映画も、どのラジオ放送も異口同音に、この戦争は古い階級制度をひっきりなしに壊しているので、我々が全員懸命に戦い、戦争に勝てば、誰もが肩を並べて更新し、光り輝く平等主義の未来に入るだろう、と告げる。」とあった。しかし、「戦争が終われば、高慢ちきな野郎どもはまたダイムラーに乗り込んだり、経営者の椅子に腰をおろしたりするだろう。そして、俺たちみたいな野郎は工場や炭鉱に戻るのだ。」とあるのを見て、降伏と同時にドイツのUボートが総統の命令に背き、いっせいにアメリカに向けて逃亡を図ったという話を思い起こした。そうして捕虜となりながらアメリカ兵とともども、イギリス空軍の偵察機に向かって「イギリスのバカやろー」と叫んだ。そういう国だから平気でたったの一撃で火達磨となるような木の飛行機など作れたのだろうなと思った。

「平時には世の中の腐敗はたいてい隠れている。戦時には、そういうものは明るみに出る。」敵がはっきりとわかる点では、戦時のほうが勝っている。だから戦争のほうがましだ、とそう思うものは、昔でも今でもそう大して変わらないないくらいに存在する。現代社会にあっては、こう思うタイプの人々は「自分たちの行動の責任は社会にあるとする人々」であり、大概は「自分たち自身の欠点を隠すための口実」に過ぎない。しかしそう思うのは、肥大した自我故での理屈であって、他者を外側にある自分と考える社会にあっては論拠のない理屈に過ぎない。主体と客体を明白に異なったものとする近代社会の生んだ妄念だともいえる。

完全な平等社会の実現は人類の理想なのかもしれないが、それは歴史を勝ち抜いてきた支配階級にしてみれば搾取以外の何物でもない。上流階級に生まれて平和裏に育って来た者にとっては、平均の生活を強いられるということは、略奪にあうことと似たようなもので、そんな野蛮な窃盗を許す社会などというものはとんでもないものでしかない。
戦争はまさに、社会闘争が引き金となって起こった感もある。本書にもあるように、「貧乏こそがこの世における最大の犯罪だ」というのがイギリス労働者階級を代表する意見の一つであるとしたら、彼らが戦争に突入して他国から略奪を働くというのも、せいぜい世の中で2番目くらいに悪いことにすごない。いや、イギリス人だけでなく、世界中どんな国でもそういうタイプの人間は存在しているのだろう。自尊心とか安心感といったものは、本当の貧しさが生み出すものなので、愛国心などといったものもそこから生まれるものなのだろう。集団化したプライドが他国への侵略となって表れるのだ。


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光人社NF文庫 フレデリク・E.スミス 栗山洋児 潮書房光人社発行年月:2009年02月 ページ数:


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