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zoom RSS 『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』

<<   作成日時 : 2018/07/07 08:47   >>

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文春文庫の本だ。ネットを見ていたら「面白いのでおすすめ」とあったので取り寄せてみた。しかし、酸素濃度低下が生物大絶滅の原因だったという話はかなり以前からいわれていたものであって、特に目新しいものではない。最近やたらと新説ばやりだが、昔は著作権がなかったので、旧説をモチーフにした新説を表しても訴訟を受ける恐れがないためかとも思われる。本書の原本は2006年に出たらしいが、「仮説」「仮説」と繰り返すわりには、多くの事柄は案外以前から唱えられていたようなことだ。書評を読むと大胆な学者だという印象だが、本を読むとずいぶん慎重で控えめなところもある。「…と思う」という言い回しが多くて断定的なところが少ない。

訳者の仲介によると、いささか拙速に書かれたらしく、わかりにくい表現が多かったり重複するブンブンも多いということである。実際読んでいて特に後半の部分は『さっきと同じ』と感じる部分もあって、どこに何が書かれていたか索引もないので見つけにくかった。恒温動物、温血動物、変温動物、冷血動物などにしても、それぞれ別の意味で使用しているようでもあり、かなり重複した部分も認めて使用しているようでもあり、分かり難い。まあ、恒温動物でも関係ない外側の部分は冷血でもよいわけである。冷え性のように病気だという場合は除いて、寝ているときの皮膚温度などは人間でも30℃近くまで低下する場合もあるのではないか(*)。逆に変温動物でも、肝心なところが冷血になってしまっては、蘇生能力が高くないとそのまま死んでしまう。
(*)調べて見たら、日本人の8割近くが腋窩体温36〜37℃だが、平均人で冬場の足のつま先は27℃ほどに低下するという。あまり恒温ともいえない感じだ。それどころか、基礎代謝の多いことには非常な無駄を感じる。

あるいは内温性、外温性という区分もあるが、如何にも生物の個体性を主眼とする近代文明的なにおいがする区分法であると感じる。外界そのものも生物の一部なのだ。しかし、かなり偏向して意味をとれば、「外側に体温がある動物」ということで「私は私と私の外界だ」という風にも取れる。そう思えばかなりしゃれた言い回しにも感じられる。

原題の[Out of Thin Airは成句としては「何もないところから」という意味だそうだ。[vanish into thin air]といえば完全に行方をくらますという意味だから、「今後はわが説が主流となる」という意味を込めているのかもしれない。重力の力が生物の推進力を発達させたという考えに対して、滋養の獲得がそれを可能にした側の属する考え方である。筆者は異なるものとしているが、酸素の獲得も一種の栄養の獲得だといえないこともない。栄養の定義にそういうのがないだけである。

一般的に、ペルム紀の大絶滅は火山の大噴火による二酸化炭素の急増やメタンハイドレートの溶解によるとされている。やはり恐竜の時と同様火山の噴火が空の海を形成したために、日差しが降り注がなくなったという。しかしそうした話より酸素栄養説のほうがだいぶすっきりする感じだ。つまり地球が吐き出した硫化水素というのは、大概海洋に吸収されるものらしいが、海が無酸素状態である場合、深海の硫化水素濃度が臨海地を超えると、きわめて毒性の高い硫化水素の泡が大気中に上昇してくる。しかも当時はオゾン層も破壊され、気温はうなぎのぼりに上昇してゆき、これが硫化水素の毒性を高めた。オゾンの破壊は、紫外線による突然変異の多い化石から確かめられているという。現在これが最も有力な大量絶滅の原因だという。風の谷のナウシカではないか。




見開きに系統図が書かれていて、鱗竜類に属する首長竜の絵が、すっぽんのように描かれてあった。そういえばすっぽんとした方がイメージがつかみやすいのかと思う。首長竜や魚竜は、恐竜類などと比べれば、ずっとヘビやトカゲと近縁だ。ただしワニは主竜類に属し、こちらの方が恐竜に近い。現世のカメは双弓類に属するとウィキなどにはあるが、そのカメ類の祖先は無弓類なのだそうだ。ついでに翼竜も主竜類だ。新しい分類では爬虫類の分類はずいぶん難しいものとなった。爬虫類の心臓は2心房1心室だと思っていたが、ワニは例外で2心房2心室だという。しかも潜水時は魚類型の心臓に変身できるようだ。その他、有隣目(ヘビ、トカゲ)の5分の1が胎生であって、爬虫類といえば卵を産むものというイメージがあったが、これも間違いであった。
++哺乳類以外のものは一般に卵を産むが、魚類、爬虫類、貝類の一部には子供を産むものもいるそうだ。見た目は哺乳類の出産と変わらないが、胎生ではないだけだ。ウィキには哺乳類以外の胎生も進化の途上で何度も発生していたなどとある。メジロザメは魚類だが、胎盤を持つ。

筆者のピーター・D・ウォードはワシントン大学の古生物学、地球・宇宙科学教授だ。地球型惑星の探索者だといえば後者が専門だともいえる。地球型惑星の内でも、地球に似た惑星といえば水と酸素の豊富な惑星のことを指す。しかしせっかく大量にできた酸素が枯渇するという大事件がそう遠くない過去に二度も起こった。一度は2億5千万年前のペルム紀の終わり、今一つは2億年前の三畳紀の終わりだった。原始哺乳類の王国であったペルム紀の世界を一変させて、恐竜の時代へと導いたのがこの事件だった。哺乳類型爬虫類(獣弓類)のほとんどすべてがペルム紀の急激な酸素濃度低下で絶滅したが、巨大な肺を築くことに成功した一族(*)だけが生き残った。酸素濃度の変化が進化の道筋を決めるというのが本書の主眼だ。多細胞生命のカンブリア爆発以降に絞って物語は展開する。5億4千万年前からだ。
(*)本書にはリストロサウルスの名を乗せているが、ウィキには大量絶滅を乗り越えた未知の生物から進化したのがそれだというようにある。肺の拡張という方法のほかに、呼吸速度の増大や鳥類がとった方法などがある。

奇妙なことだが、筆者が以前から用いられているという「ジオカーブ」[Geostationary Carbon Observatory]などという二酸化炭素モデルのことはウィキペディアにもどこにも載っていない。その他の筆者が紹介しているもろもろの事柄にしても同様である。よほど少数派の見解なのか。温暖化がこれだけ叫ばれているののジオカーブのことが百科事典にないとは驚きだった。温暖化などどうでもいいということか?もっとも、筆者の目論見は酸素濃度の方であって、ジオカーブのように誤差の大きなものよりも、酸素濃度の見積もりのほうがずっとあてになるといいたいような感じもある。ジオカーブ以外の見積もりも大体同じようだそうだ。酸素濃度推定の「バーナー曲線」というもののほうが検索に引っ掛かる。バーナー曲線など無しでも、酸素量の急激な濃度低下が過去にあったことは半世紀前から知られていた。そのころは大きな山火事だと考えられていたと思う。パンゲア超大陸が分裂を始めた少し後に大絶滅が始まったので、酸素濃度の低下が巨大な山火事のせいであるというのは当たっているように思う。考古学的な裏付けもあるのだろう。この時代の地層に酸化鉄が含まれていないことが理由の一つだったと思う。それがコンピュータシミュレーションとぴったり合致するというのはなかなかのものだ。しかしどういうシミュレートにしても、大絶滅期のデータに合わせるようにうまく拵えたものかもしれない。それに地質学的調査から得られた過去の二酸化炭素レベルや酸素レベルにその他のものも適当に合わせたものだとも考えられる。

従来、生物の多様性と進化は組のように考えられてきたが、筆者はそれに加えて異質性というのを加えている。「酸素レベルの低下は高い異質性の出現率への引き金となる」ことが仮説の一で、「相対的に高酸素濃度にある時期が高い多様性と相関関係にある」が仮説二だ。仮説一の正しさは、恐竜の肺が鳥類と同じ構造であったことを物語るが、この事は別の研究によっても支持されている。

周期律表のすべての組み合わせの中で、水素=水酸基結合と、水素=フッ素結合が、一個の電子移動当たり最も大きなエネルギーを生み出す反応だと書いてある。そうだったのか。本当にすべての組み合わせの内だったのだろうか。フッ素は有機物と反応すると爆発するので生物は酸素を選んだらしい。酸素分子も二酸化炭素分子も水分子より大きいので、乾いた陸上では何か呼吸のための器官があった方がよい。そうでないと容易に脱水状態になって死亡する。動植物における主要な死因が脱水であるそうだ。ミミズのように湿った土壌に棲んでいるものには必要がないと書かれているが、最近アスファルトのせいか、日向道を歩いているとミミズがずいぶん干からびて死んでいるのが目に留まる。

呼吸というと、息を吸ったり吐いたりする運動を思いがちだが、魚類というのはそういうことはしていない。ただ水に向かって泳ぐだけだ。これを対向流システムというらしい。血液の流れは水流と逆向きで、こうすることで陸上動物の30倍の努力をしなければ取り込めない酸素が取り込める。そして肺呼吸とは逆に二酸化炭素は容易に水に放出することが出来る。このような鰓呼吸を行う生物に「呼吸」という表現は決してふさわしいものではない。

現在の地球の大気は、酸素が21%で窒素が78%、この二つで99%を占める。次に多いのがアルゴンだが、これはカリウム40のγ崩壊で出来た副産物が多いせいだろう。動物が不断に吐き出している二酸化炭素はほんの少し、0.03%ほどしかないが、これが強烈な温室ガスとなっている。地球は成立してしばらくたつと、三層構造―核、マントル、地殻―に分かれた。その当時大気はなかったと考えられるから、原始地球大気はマントルからの熱が噴き出す火山の噴火ガスによってできたものと考えられる。そうすると半分が水蒸気、四分の一が二酸化炭素でないとおかしい。
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上の図を見ると、金星にはやけにアルゴンが少ないということがわかる。金星には案外火山活動がなかったのかもしれない。気圧の分だけ上乗せしたとしても少ない。

まあ、そんなことは今はどうでもよい。近年米国のコーネットらは、高い頻度の新種形成が古生代に起こったことを見つけたが、それは二酸化炭素レベルの高い時期だということが判明した。この事からか、地球温暖化しても人類の危機は訪れない、生物は温暖化の場面では常に繁栄してきたなどという意見を述べる人がやけに多い。しかし本書では、二酸化炭素濃度が高く高温になると、好気的生物が低酸素から受けるストレスが高温によって増大することを繰り返し観察してきているとある。そうしてそのことは実際過去の大量絶滅と大概かかわっているようだ。対して寒冷化すると、大気中の酸素量は概して増加する。温暖化すると大気中の水蒸気量が増えて、酸素や窒素を追い出すことになる。この事は特に神経系の多い生物には有害だ。脳に十分な酸素が供給しにくくなる。つまり2酸化炭素と生物の進化絶滅とは関係なく、酸素量が決め手だという仮説だ。ただし、「相関関係は因果関係を意味しない」から仮説は仮説だと断り書きはついている。

さて、動物の起源の話だが、しばらく前から古生物学者と分子遺伝学者との間に乖離があった。古生物学者たちが、動物の発生はカンブリア紀よりも少しまえっだったと主張していたのに対し、分子遺伝学者は原生動物の分子時計を用いた研究でそれがはるかに古いということを主張していた。5億4千万年前より少し以前であるか、10億年かだ。今では古生物学者の言うとおりだったこととなっている。動物の起源は6億年前をさかのぼることはないという決着がついたのは21世紀の初めだとあるが、今後また変わってくるかもしれない。

カンブリア爆発の中でもとりわけ有名なアノマロカリスであるが、とりわけ奇妙な捕食形態が成功を導いたわけでもなかったらしい。頭足類のように大成功をもたらしたわけではなかったのは、当のカンブリア紀でも同じようであったようだ。しばしば、「カンブリアの王者」のように語られるアノマロカリスであるが、そうでもなかったかもしれない。かつて考えられていたような「強者」ではなくて、身体が大きいだけの軟弱な「草食系」であったのかもわからない。何か頭足類の餌のような感じであって、三葉虫の殻など硬くて歯が立たなかったともいわれている。次のオルドビス期に入ると早速オウムガイ類に駆逐されて滅んだ。オウムガイのオウムとは空飛ぶオウムのくちばしだそうだ。飛行船ツェッペリン号と同じ仕組みで浮力を得ている。英名はノーチラス(水夫、船舶)というそうだ。潜水艦の構造というのはオウムガイの構造をまねたものであるから、しばしばノーチラスの名が使われることになった。

シルル紀からデボン紀にかけて(4.5〜3.5億年前)には2度にわたる史上最高度の酸素濃度期があった。10%以上から30%以下である。濃度の高い時期には非常な大型化が生じた。大型で先のとがった円錐形のオウムガイは全長10mにも達していた。陸上にも植物があふれるようになると、陸上に上がる動物も現れ始めた。最初の動物らしい動物がおそらく節足動物の三葉虫であったように、最初の上陸動物も節足動物であったようだ。今度はサソリであったかそれともクモ、あるいは原始的な昆虫類だと目されている。クモであったかもしれないが、化石に残らないのでわかっているところではサソリらしいが、どちらにせよクモ類であることには変わらない。三葉虫にしても、甲殻類ではなくクモ系統なのだが、蜘蛛のようにふにゃふにゃのものよりも、サソリ類といった方がよいようにも思うが、なぜクモ類なのだろう。
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ちょうど良い絵をヤフーで見つけた。クモ類が属する夾角類はカンブリア初期までさかのぼる。それほど違いはないだろうが、鳥類が恐竜の直接の子孫だという風にはなっていないのが難点かもしれない。両生類がデボン紀末期に陸に上がったらしいということは、たぶん海中が無酸素状態になったのでやむなく陸で息継ぎをした程度のものであって、えさを求めてというほどのものでもなかったと思う。

次の石炭紀では酸素レベルは最高の35%にまで上昇した。両生類が完全に上陸したのはこの最初の時期だったらしい。昆虫が巨大化したのもこのころだ。「大きいことはいいことだ」という19世紀の古生物学者エドワード・コープの規則というのがあるそうである。自然淘汰の法則からいうと、最も単純に納得できる。ただ許田あい化するためには呼吸と食物がネックとなる。だから拡散によって酸素を取り込む生物はなかなか巨大化できないが、エサよりなにより酸素が決め手だということは各種実験飼育によって明らかなようだ。「コープの規則」では、捕食から逃れるために必然的に大型化するというものだったが、別段捕食者がいなくてもそうなるし、エサが小さくても酸素さえふんだんにあればよいらしい。酸素毒を防御するための大型化だとすれば遺伝子に組み込まれているなどという屁理屈はいらなくなる。

酸素濃度が史上最高だった3億年前の空の色は茶褐色だったというのは面白い(*)。多発する火事と落雷のために生じた大量のすすが原因だというが、空気の錆の色だという風にも解釈できる。空気中に錆を示すようなものが含まれていたのかもしれない。火事や落雷の頻発で暑かったのかといえば、このころは史上最大規模の氷河期であった。
(*)現在の地球大気の構成では空の色は青く見えるが、これはレイリー散乱という現象のためだ。短波長の光がとりわけ散乱される。水滴や氷滴は逆に長波を散乱しやすい。だから晴れている日の空は青く、よく晴れた日の空は群青色を呈している。青以外の光は太陽から直進しているので、まず色のついた光には見えない。青成分がとれたからやや黄ばんで見えると思うが、やはり太陽は白い。なんとなく太陽が赤く見えるのは、昼間の明るさのためだろうと思う。明るいと赤色が鮮やかに見え、暗くなると青がはっきりしてくる。これをプルキニエ現象などという。街灯が青いのも多くはこの理由だ。曇りの日はあちこち平等に散乱するので空も白っぽい。散乱であっちこっちから目に光が入ってくるためだ。高緯度になると空の厚みが減るので濃さがまし、次第に黒くなってくる。黒いというと何か黒いものがある場合もそういうが、この場合は何もないので黒いわけだ。

石炭紀の大量酸素発生は、それが消費の方に回らなかったとされる。大量の森林が光合成で酸素を作り出す一方で、森林全体が晋で倒れていった時にそれらの木々を分解する菌が存在していなかったためだとされる。そのため石炭紀には通常の600倍の速さで石炭が埋没した。一方頻繁に起こる最大規模の山火事に対する防御として、当時の植物は分厚い樹皮と維管束をより深部に埋め込むことなどで対応していた。加えて広範囲の湿地帯が含む多量の水分だ。動物とは逆に、植物にとっては単純な酸素だけの増加は停滞を引き起こすはずだというが、石炭紀の植物の衰退は見られないという。

現代の両生類や爬虫類のほとんどは走りながら同時に呼吸することが出来ない。こうした中で制約を発見者の生理学者デイヴィッド・キャリアにちなんでキャリア制約というそうだ。それで長い運動が出来ない。トカゲが獲物を追うときは息をしていないので、肺に血液を送り込む心室など必要ない。長時間の運動を可能にしたのが、四肢を胴体の下に据えるという発明だったが、さらに完璧な適応が二足歩行であった。恐竜と鳥類につながる系統と、もしかしたら人間の直立2足歩行だ。いろいろな説があるが、呼吸法の改善のために2足歩行を選んだというのも若干ありかもしれない。ヒトの場合は呼吸法の改善に迫られる切羽詰まった理由は何もなさそうだが。

ペルム紀の終わりが史上最大の種の絶滅だ。植物が枯渇したので、浸食で山は崩れ、蛇行する川はなくなり網状河川ばかりがみられるようになった。酸素の急激な現象に先立ち、二酸化炭素がほとんど現在のレベルにまで急激に減少したことで植物が大幅に絶滅したという。現在の植物は低二酸化炭素の環境に順応できた光合成システムを持っているので、そう簡単にはくたばらないそうである。

さて、いよいよ恐竜の時代だ。三畳紀爆発と書かれているが、今から振り返ってみると、この時代は最も低酸素の時代だった。動物が押しなべて次の絶滅期を迎えていたなかで恐竜類だけが繁殖して種を増やしていった。すべての竜盤類恐竜が現在の鳥類と同じ機能システムを持っていたと断定するに足るだけの間接的な証拠が実際に存在しているそうだ。全くどうしてこうしたうまい仕組みを自然というのは見つけるのだろうか。もっとも、考えようによっては肺そのものを固定するという方式は魚類電話も行っていることで、気嚢はその延長の考えともいえる。魚類にあって人にはないものというと、血液の対行流システム(血流と水流の向きが逆)だ。これだけでもひどく効率が落ちるらしい。
https://www.youtube.com/watch?v=atUibHbWl4k

鳥は平地で3割、1500mの高地では10割も効率の良い呼吸ができる。また100mを全力疾走しても呼吸が荒くなるようなこともない。哺乳類の用のようには息が不十分なまま次の吸気を行うようなロスがないからである。激しい運動を行えば行うほどこの差は顕著となる。
 
つい最近まで―ということは今後また元に戻るかもしれない―過去3億年間における最低の酸素レベルは、2億5千万年前のペルム紀=三畳紀境界であるといわれていた。今では2億年前の三畳紀=ジュラ紀境界となっている。これが竜盤類にとっては非常な幸運であって、偶然恐竜が栄えることとなったのかもしれないという。多くは三畳紀に絶滅していた中で、竜盤類は全くの無傷であったどころかますます繁栄することとなったようだ。あまり絶滅してしまっては困るわけだから、その点は手ごろなトリックがあっただろう。少なくともペルム紀のような毒霧はなかったので、速やかに栄えるものは栄えた。竜盤類類はすぐに鳥盤類を生み出し、彼らを4足歩行の草食動物にすると、自分でそれを餌にした。この辺がトリックなのだと思う。

白亜紀の最後に、自分で嫌になってどこかに消え失せたような恐竜たちだが、最近恐竜の心臓が2心房2心室であったらしいことから彼らが温血であったかのように言われているらしいが、どうも筆者はこれには眉をしかめているようだ。変温動物であっても、周囲が適当に暖かく、しかも体重がそこそこあれば、わざわざ非効率的な基礎代謝を選択するというのは奇妙らしい。変温であれば10倍も効率がいい。それにひたすら動き回っていれば別段変温でも関係ないだろう。酸素が乏しく、しかも暑かった三畳紀とジュラ紀にわざわざ酸素を無駄食いする恒温性を恐竜が選択するというのは何かしら愚かな選択と思える。寒さで動きが鈍るものなど現在の環境下でもトカゲ位のものしかいない。朝方でも10度以上はあっただろう世界で、1トンもある恐竜が冷えるわけがない。零下40度の中でも冷えるのには半日もかかるだろう。体は温めるよりも冷やすほうがずっと難しい。暑い環境でわざわざ体を温めるなど愚の骨頂のようにも思える。

「結局何が残るだろう?現在の地球上で知られていない類の動物である。驚異的に速い成長速度と、現代の鳥類の最良のものには劣るが、他の現代の動物よりも薄い空気からうまく酸素を抽出できる肺システムを持つ変温動物なのだ」という。動脈血と鳥類の機能は造血のためとも考えられるそうだ。静脈血の完全な隔離を伴う四室心臓や赤血球数の増加などがあっただろうという。恐竜たちに現代のカラス並みの知能があったとはいえないだろうが、犬や猫よりは概して賢かったかもしれない。変温で寒い日の朝には少し動作が鈍くなるようなことも知恵でカバーできたようにも思える。もしも彼らになめらかに動く舌があったならば、彼らも小鳥たちと同じように彼らなりのことばを話していただろうか。そういう風に考えていくと絶滅の日々はつらかったかもしれない。といっても、いくら賢くても自意識というものがなければ別段つらくはないのかもしれない。現代の鳥たちは鏡に映った自分の姿を見て攻撃するように人間は解釈しているようである。賢い鳥たちには自意識がないと人間は思っているのである。

読み終ってふと思ったのは、人類が脳を巨大化させたのはひょっとして酸素毒を防ぐ目的だったのではないかということだ。頭の大きさと知能との間にこれといった相関関係のないことがどうやら明らかになった今ではつくづくそう思うのである。恐竜の時代には酸素毒の効果は二酸化炭素によって中和されていたのが、二酸化炭素濃度が薄れるとともに毒素が前面に表れてきた。高温になると酸素毒の作用はそれほど際立たなくなるのかもしれない。


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