エイコサノイド

プロスタグランジン研究の新展開 (現代化学増刊) [ 室田誠逸 ] - 楽天ブックス
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健康障害の多くは、エイコサノイドというホルモン疑似物質の過剰生産によっておこる。エイコサノイドはアラキドン酸(20:4n-6)という脂肪酸から合成される。エイコサノイドは生体の炎症反応に関与し、リウマチ様関節炎や乾癬の引き金となったりする。正常な過程においても熱や痛みを引き起こす。炎症反応に関与するという点から見ると、どうやら免疫反応システムが健全であれば、過剰生産は起こらないようにも思える。

エイコサノイドには、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンといったものがある。プロスタグランジンはしばしば痛みの原因物質となることで、薬品の説明書にもたいてい書かれている。炎症反応においてはアラキドン酸カスケードは、抗原によってマスト細胞が産生する酵素によって惹起される。この酵素「ホスホリパーゼA2」が核膜または細胞膜のリン脂質に作用して、アラキドン酸を遊離するのである。このアラキドン酸が原料となって様々な炎症性物質を作り出す。脂質がもとになっているので「脂質メディエーター」などと呼んでいる。滝のように算出されるので「アラキドン酸カスケード」という。アラキドン酸は大きく2つの方向に分岐する。シクロオキシナーゼによってプロスタグランジンやトロンボキサンに分岐するケースと、リポキシゲナーゼによってロイコトリエンになるケースとだ。NSAIDsというのは痛み物質であるプロストグラン人の生成を抑えるなどとあるが、どうもシクロオキシナーゼの活性を阻害するらしい。そうするとトロンボキサンの生成も阻害するので、出血が止まりにくくなるかもしれない。

アラキドン酸は脳内でβーエタノールアミンと結合すると「アナダミド」という陶酔感・多幸感を催す物質に変わり、勇気ややる気を引き起こす。アナダミド(アナダマイド)はアーナンダのアミノ物質という意味で、1992年に発見された。これはアラキドン酸の若干のプラス点であるが、だからといって脂質の摂りすぎは好ましいものではない。


プロスタグランジンについては30種類以上の亜種が知られている。1930年代から、男性の精液中には、子宮筋を収縮あるいは弛緩させる物質があることが知られていたが、その後それが生成されて脂肪酸の一種であることがわかると、前立腺[prostate gland]に因んでプロスタグランジンと名付けられた。いずれも炭素の五員環を持つプロスタン酸を基本構造とし、これに二重結合や水酸基、ケト基などがついて少しずつ構造が違ったものとなる。五員環につく酸素原子と二重結合の数A~Jの10群に分類されている。健康な血管内では血小板が絡み合うことを防ぎ、傷ついた血管では血栓を作り血小板をからみ合わせるという両面の働きをする。主に血圧の低下など血管拡張に作用し、また血液凝固も促進するが、痛みの成分であるかどうかあまりはっきりとはしない。プロスタグランジンEは乳がんを促進するらしいが、プロスタグランジンJは抗腫瘍作用があるらしい。それから、ロイコトリエンについては喘息を強く引き起こすことが知られているそうだ。

前回述べたように、どうも合点がいかないのは、n‐3系の高度不飽和脂肪酸は、アラキドン酸から合成されるトロンボキサンの合成を阻害し、血栓の形成を少なくするという点だ。これでは血管が傷ついた場合の修理ができにくくなるではないか。

それと先に挙げたような免疫システムから見たプロスタグランジンの生産である。少しでも外界から異物と思しきものが侵入してくれば、たちまちマクロファージやマスト細胞は各種の脂質メディエーターを細胞膜を構成するリン脂質から産生する。これは自然免疫といわれるもので、抗体の必要性などない。抗体の働きが必要な体液性免疫に行き着くまでに細菌類を撃退してしまえばそんなものは必要ない。特にマクロファージの力が強力で、貪食作用(ファゴサイトーシス)が十分働いていれば、抗体の必要などない。細菌でも風邪のウイルスでも喉元で撃退できる。しかし、細菌などではなくてなんでもないものを攻撃してしまうというのがアレルギーといわれる奴だ。アレルギーも徐々に抗体を持ち始めると厄介なものとなるらしい。蕁麻疹や花粉症のような軽いものからアトピー性の皮膚炎のように長引くもの、自己抗体から膠原病のようなものを引き起こす。

免疫本来の意味としては「二度と同じ間違いは起こさない」というほどの意味らしい。紀元前6世紀のギリシャの歴史家ツキディデスのことばがもととなって「二度無し病」と呼ばれていた。だから本来自然免疫などという言葉はないはずだが、いつかそうなったのだから仕方がない。現代社会の環境はクリーンになりすぎて自然界に抗原なるものがなくなったためなどといわれている。天然痘だとか、はしかなんかもそうだ。天然痘の大流行による人類滅亡説なども巷でささやかれているわけである。自然の抗原による繰り返しの免疫記憶の強化再生を「ブースター効果」などというらしい。ともかく今では、歳をとると免疫も二度三度と同じ間違いを繰り返すようになるようだ。こうなると古来からの説は通用しなくなってくるが、近年にわかに生じた現象だともいえる。種痘の力は弱すぎて、自然治癒にはかなわないものだったことが今にわかるかもしれないが、今のところ世の中のきれいすぎる環境が悪いのだということになっている。きれいにはなったが、花粉症のような余計な免疫病が増えたことはどこか気になるところだ。昔日に比べて近世は記憶というものが総じて人類の頭からも肉体からも抜け落ちるようになった。記憶が次第に薄れていく時代にわれわれは生きているといってもいいのかもしれない。生命の中の記憶に限らず、およそ記憶媒体というものが短時間に朽ち折れる世界が今の世界だ。石の記憶にしろ木や紙の記録にしろ物質的な記憶は長生きだったが、今のは磁石の記憶であって仮に地球磁場が明日反転しても、宇宙線の大嵐が起こっても記憶はすぐに消えてしまう。

その話はともかくとして、昔から「バカは風邪をひかない」といわれる。若者はともかくとして、現代のように痴呆老人が多くなってくると、つくづく呆けは風邪をひかないことに気が付く。引いていても症状というのを起こさない。風邪のウイルスが症状を起こしているのではなく、人体の側の免疫機能が熱を出したり鼻水を出したりしているからだ。免疫反応も脳で受け持っているので、脳機能全体がやられた痴呆老人は風邪の症状は起こさない。肺炎にかかっても、なんともない状態が続いて、ある日突然死んでしまう。けれども、放射能被曝などでは致死量を浴びても、健康なものの何倍も長生きするか、ひょっとすると生き返るということも考えられなくもない。

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