犬の先祖

考古学的な調査からは、人が犬の家畜化を始めたのは2万年前ということになっているそうだ。犬の起源は狼だということになっているが、ずっとのちに豚を飼いならした時でさえ、最初に豚の祖先であるイノシシを飼いならそうとして何人もの農民がその凶暴さの犠牲になったという。狼の凶暴さはけだし猪よりはるかに大きいのであるから、狼をそのまま飼いならしたということはまず考えられない。2万年前の狼の一派には人懐こいのもいたのだろうか。それともヒトのほうが強かったのだろうか。ホモサピエンスではなくて、ネアンデルタール人が狼の番をしていたということも考えられる。ホモサピエンスが力の強いネアンデルタール人に狼の番人を委託したという可能性だ。仮にネアンデルタール人が毛むくじゃらで雪男のようであったなら、狼の牙に耐える防御力があったのかもしれない。

ウクライナのデレイフカ遺跡では、多数の馬の骨から、馬を飼いならしたのは紀元前4000年と推定されているが、放射性同位元素の測定では前8世紀とされていて、かなりの齟齬がある。今の時代の雰囲気では放射性同位元素による測定を信じてしまいそうだが、前8世紀ではいかにも遅すぎる感じだ。20世紀の後半から活発になった西アジアでの考古学調査の成果から判断すると、最初に動物の家畜化を始めたのは集落に住む定住民であって、遊牧民が必要に迫られて自然と家畜化を始めたわけではないらしい。定住がはじまって2~3千年たった紀元前7600年ころに肥沃な三日月地帯とその周辺でヤギと羊の家畜化が始まったとされる。調理の必要がなく、全くの生肉でも食べられる羊肉は大変便利で、冷蔵庫のない当時は貴重な栄養源であった。生だからビタミン類も豊富だ。殺したてだから臭みもない。むしろ良い香りがするという。羊にやや遅れて、前7000年には牛や豚も家畜化されたらしい。

犬だけがやけに早い。犬を飼っていれば狼が近づかないとでも思ったのだろうか。しかし、実際はどうも狼のほうに多様性があって、狼の(祖先)本来の習性というのは非常に憶病で用心深くめったに人里には表れないのだが、臆病も極端化すると、幽霊にこぶしを振り上げる子供のように、人里に突進してゆく個体が現れるそうだ。そういう次第で、どうも犬の家畜化に関して積極的であったのはひと側ではなくて狼のほうであったと思う。狼に主導権があったなどと言われると面白くないから、檻の中に誘ったのは人であったことにしたかっただろうが、柵の中に飛び込んできたのは狼であった。狼の遊びの類であって、大人の狼が人に近づくのは危険であるから、やったのはたぶん子供の狼だったろう。子供のうちなら人間のほうも襲ってはこない。狼ならジュラ紀の終わりにはたくさんいただろうから、ネアンデルタール人やそれ以前のホモ属の村にも忍び込んでいたかもしれないが、人のほうが囲いを作る生活をしていなかったので痕跡が残っていないだけなのかと思う。人の群れにしてもある程度の大きさというものがないと子供といえども仇敵を招き入れるような真似はしないだろう。

2万年前というと、ウィキの「氷河時代の年表」を見ると、ヴュルム氷期にあたる。氷河期といっても均一に寒かったわけでもなく、急激な気温低下と上昇を繰り返していた。特に氷河期が終わった12000年前以降、しばらくは寒の戻りが激しく、10年で8度近くも気温が低下した時期もあったらしい。そうした激しい気温低下で食べ物がなくなったとき、いてもたってもたまらず人里に近づく狼の一群はその都度存在していただろう。絶え間なく火を焚いている村の周りは少しばかり暖かく見えたのかもしれない。蛇には赤外線が見えるともいう。狼にもそれが可能なのかも知れない。
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