『背骨のゆがみは万病のもと』

1996年に甲田光雄さんの書いた本だが、子供との対話形式になっていて面白く読める。通常の医者にはできない発想があちこちに書かれている。人間が直立二足歩行をするようになって脳が進化したのは、脳が心臓より上に来たからだという。例の狼に育てられた子がとうとう人間化しなかったのも、四足で歩いていたばかりで脳がバカになったのだろう。果たしてこういう発想をした人類学者がいただろうかなどと思う。脳が巨大化したから直立したのか、直立したから脳が発育したのか散々もめていたではないか。学者連中が多様な意見を出し合うのもよいが、なんとも無駄が多いように感じる。まあ、文明社会など無駄が多くて停滞してしまった方がかえって人類のためにはよいのかもしれない。

1995年時点で、腰痛を覚える高校生がなんと80%以上に達するというデータには驚いた。さすがに小学生のうちから腰痛を訴えるものは少ないだろうが、中学生になれば3人に2人が腰痛もちだったらしい。肩こりも、中学生以上になると7割以上のものが訴えている。現在ではもっとひどいと思う。先日道を歩いていたら、小学2年くらいの男児が「暑い、暑いよ」と泣きじゃくりながら母親に縋りついているのを見かけた。31℃か32℃しかないのにどこが暑いのだろうか。ちょっと腹立たしかったが、こういう子供も増えているのかもしれない。「背中ぐにゃ」というのは「頸椎側弯症」のことだろうか。これは幼稚園児から異常に多くなっている。でも、あのウサイン・ボルトも先天性脊椎側弯症で、コーチが「100メートルは絶対走れない」といっていたのに、なんでだか知らないが金メダルだ。がくがくで肩や腰が左右に大きく揺れ、歩幅が左右で20センチも異なるおよそ不格好でお薦めできない走法で世界一とは何だろうと思う。若いうちは多少曲がっていても別段問題ないのかもしれない。先天性某というと、さぞ重度障害のような風潮だが、パラリンピックではなくて普通のオリンピックで優勝だから、障害者などというのはただの思い込みの副産物なのだろう。ボルト自身は『背骨が僕を育ててくれたのかもしれない』といっているそうだ。

背骨のゆがみを矯正するには、背腹運動に勝る体操はないという。竹の筒へおもちゃの積み木を入れ、背腹運動の要領で左右に振っていると、何時しかまっすぐな一本の柱が出来上がるそうだ。背骨もこれと同じだという。脊柱の左右には交感神経の幹が走っているから、普通に脊柱だけ揺らしていると交感神経が緊張して血液が酸性に傾く。それを防ぐために腹の出し入れも同時に行うといううまいやり方が説かれている。これが西勝造先生のえらいところなのだそうだ。詳しいことはわからないが西式健康法の確立は戦前だから、そのような昔からこのような健康法を生み出したというのは炯眼である。

本文に多少西勝造の参考医学について触れている箇所があって、これが意外と東洋の医学などではなくて、西洋医学ばかりなのである。1834年にグリフィン兄弟が脊柱の狂いから様々な病気が生じてくること。1841年にマーシャル・ホールが、脊髄神経と内臓諸器官の働きの関係の密接であることを述べた話。1874年にスチルが骨の狂いを直せばいかなる病も霧消するという「オステオパシー」を説いたこと。1884年にパーマ(1845-1913)がカイロプラクティックを考案したこと。1907年にヘッドが脊髄神経と皮膚表面の過敏なところの関係を利用した診断治療を開始。1910年のアブラムス博士の「スポンデイロセラピー」の提唱。1912年スタッフェンの『運動療法による実際論』も背骨の狂いを直せばさまな病が治ることに触れている。まあ、西洋の方でも独自にツボのようなものを見つけて、治療法を編み出していたという事だろう。オルゴンエネルギーだとか超能力の研究が科学路線から外されたのとほぼ同時に、そうした医学も脇に押しやられてきたのだろう。

その西式健康法には6大法則というものがある。2つは静止的で固定されたもの。4つは運動に関するものだ。西洋の四大に東洋の上下でも加えたものだろうか。基盤は西洋的だ。板の上に寝ることと、半円形の木枕を使うというのが、静的な2つの法則。いかにも東洋的だ。それから運動の法則が4つ。金魚運動、毛管運動、合掌合蹠運動、背腹運動だ。これらの運動を行うときは暗示にかかりやすくなるため、よこしまなことを思ってはいけない、世界人類の平和を祈ったりする心構えでいる必要があるという。

甲田さん自身が最初に行った西式運動は合掌合蹠運動だった。25歳のころ背骨の曲がっていることに気づいてから7年間毎日3回もやっていたそうだ。これは仰向けに寝て両手両足を合わせ、その状態で上下に往復させる。一見したところ、4つの運動の中で最も簡単だ。ほとんどの人は股関節の中へ大たい骨の骨の頭が正しくはまっていないので、両足の裏を合わせると、ひざが床につかない。ほとんどというか、ほぼ全員ではないかと思う。赤ん坊はつくと思うが、もう小学生にもなると、股関節が固くなってくると思う。開脚をして、両方の脚が一直線になるような人なら問題なくできるはずだが。背骨もまっすぐになるはずだが、この運動でまず土台である股関節にしっかりと左右の脚をはめ込むことが大切らしい。平均人はそういう事はまずできないから、健康診査では正常で問題なしとされるが、実は不良品で修理の必要があるのだ。禅のお坊さんで座布団で左右の位置を調整するという人がいるらしいが、体の矯正より先に瞑想に重点を置きすぎているように感じる。

まず合掌合蹠で左右の神経を整えてから毛管運動を行うのがよいらしい。なぜかというと、末梢の細胞が血液を吸い取る力を強化するからだという。よく心臓ポンプだなどというが、あれは封建的で、『生体民主主義』とはマッチしない。昔、イタリアのジョバンニ・アルフォンス・ボレリ(1608-79)という物理学者が、心臓が血液を送り出す力を計算してみたら、18万ポンド(約80トン)という圧力を得たそうだ。そんな力は心臓にはないという。前に、リンパ液が循環に大体2日ほどかかるといったと思うが、心臓ポンプなしだとそれくらいになる。多分、心臓の役目は太鼓持ちのようなものなのだろう。それにしてもかなり古めかしいが、案外生命の仕組みと科学理論は相いれないところがあるのかもしれない。生命は物質と精神の結合体であるのに、科学理論では物質の理解もいまだ及ばない段階であって、とてもじゃないが自慢できるような代物ではない。しかし、現在は医学的にも静脈血は筋肉ポンプで還流しているとなっているが、あまりこんなことを考えようとする医者はいないようである。模倣性によって生きる代表者といえるだろう。

この前、少食アスリートの話をしたが、本書には、メルボルンとローマのオリンピックの水泳で4個の金メダルを取ったマレー・ローズ(1939-2012)が生野菜菜食主義であったことが書かれている。肉食は持久力を奪うという事はどうやら事実らしいが、なぜ戦後になってまやかしとも思われる栄養学が流行したのだろうか。カロリー説が蔓延したせいで、世界中のベジタリアンが食いすぎの弊害で栄養失調に悩むことになってしまった。数年前くらいからようやく菜食主義者は肉食主義者の2倍もスタミナがあるという事がわかってきたらしいが、いまだ日本でのベジタリアンは世界水準よりもはるかに少ない。菜食主義を実践しようと思えば、日本にはタンパク質豊富な豆腐や納豆などは手軽に入るうえに、野菜類も豊富なのであるが、何よりも人と同じことをしようという社会通念が邪魔をして一向に普及しない。

次に甲田さんのやったのは金魚運動で、背腹運動は最後だったらしい。『もうこれしかない』と必死でやったらしい。そうすると背骨のあちこちがぽきぽきしてきて、次第にその回数が多くなって大変気持ちよかったそうだ。たいていの医者は「骨は新しく形成されることはない」などというものだが、甲田さんによると「体操によって削られた分反対側の骨が新しく作られる」という事になっている。どうも甲田氏の言い分のほうが現実だ。多分国民が総じて体操運動や小食生野菜食で健康になったりしたら、国の経済成長が止まるからではないかと勘ぐっている。もっとも実際にそういう社会が来ないことはおおむね想像できる。精神性の低い人間にはどう見ても無理だからだ。人間の性質が理知的なものとは正反対だったゆえに社会主義革命も正体不明なものになったわけだ。

カロリー計算などただ食品が如何に酸素と完全燃焼するかを計ったものに過ぎないのであるから、こんなものが生命に通用するわけもないのであるが、何時から妄信するようになったのだろうか?高校のとき生物だか何だったかで聞いた話だから40年以上も前の話だが、今でも大体同じだろう。いわゆる西洋医のよりどころとしているカロリー式など相当胡散臭い話だ。それより、背骨と腰に関しては民間療法のほうが相変わらず医療センターのやり方よりも優れているというのが驚きだ。

甲田光雄氏の本は35年ほど前に『断食療法の科学』というのを読んだことがある。しかし今度の本のほうがぐっと面白い。特に生野菜食が肉食よりもスタミナを増すという点には、かなり驚いたが、ネットを見ると、そういう事も近年明らかにされてきているという事のようだ。たいせんちゅう、レーダーの発明自体は日本のほうが先だったが、普及したのは敵のほうが先だったという話をちらりと思いだした。



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