関節リウマチ

関節リウマチで知られる有名人がフランスの画家ルノワール(1841-1919)で、1888年47歳の時に発症したらしい。1905年ころから悪化し車いす生活となったが、その後も医者から禁じられているたばこを大いにたしなみ、「色彩の魔術師」といわれた。手はひどく変形していたが、それほど痛がるそぶりは見せなかったらしい。痛みに耐えることを一種の修行として毎日の勤めと考えていたのかもしれない。聖シメオンの苦行みたいなものである。そこまでいかなくても、人生において北風を好むものは思ったよりも多そうだ。ルノワールという人は楽しい絵画しか描かなかったという。楽しさというものは絵画という手段であらかた外に出してしまって、内には悲しみや苦しみが凝縮されて残る。そういう方法で勤行のひそかな楽しみを日夜続けていたとも考えられる。

わざわざ雪山童子の例など持ち出さなくても、無限の価値のあるものと引き換えならば、自分一人の身体など何の価値もないというのが人情というものである。遠いギリシャの世界でも、最も価値のあるものは知恵であり、2番目が富であって、3番目が美女であった。美女というのは健康のことかもしれない。青年に出された問いでは世界一の美女であったが、老人ならば健康かもしれない。若者はおろかにも美女を選んだが、老人の場合であったなら愚かにも健康を選ぶものだともいえる。そうではなく、病気は天からの贈り物なのであって、病気というものは知恵と富をもたらすものなのだ。それでマイケル・J・フォックスはパーキンソン氏病を患ったとき、ずいぶん神に感謝したそうである。平均よりも少しばかり高みにいる人物の場合は大概「ラッキー!」と思いそうなものである。人生の価値度というものは、寿命に生活密度を掛け合わせたものなのであって、生活密度が高ければ、足萎えのようなものであっても不死の病に悩むものであっても一向にかまわないわけだ。歴史というものは常に世の中が健康ブームに沸き返っていることを述べているわけだが、よくよく振り返ってみれば肉体が健康であるということにはさしたる意味はないものであるに違いない。肉体というものは高々100年もたてばすべて滅びるものでしかない。そんな儚いものに賢人が拘泥するであろうか。むしろ「健全な肉体に健全な精神が宿る」などという思いなしこそ愚かなたわごとであって、それはプラトンがかつて「こんな風に毎日漁に出て働いてはいるが、いったい彼らは生きているといえるだろうか」というほどのものではないのか。不具者の魂のほうがより健全で清浄なものではないだろうかと思う次第である。そうして歴史はそのような例のほうが多いということを語っている。逆に肉体の不具を精神の手綱で抑えた身近な例がウサイン・ボルトであった。彼は生涯まともに歩けるようにならないといわれていたが、反対に世界一足の速い男になってしまったのだから、本人は大変な努力をしたのだろうが、傍から見る限りではこんな面白いものもあまりない。そうしてより興味のあるのは、障害者のほうがひとたび志を持てば、健常者よりもチャンピオンになる確率が高そうなことである。このことは「心頭滅却すれば」ではないが、グロデックの正しさを暗示させるものだ。
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余談だが、かつてヨガ道場の沖正弘(1921-85)黒帯導師は、病気を治したい一心で全国から集まってきた患者たちに「おめでとう」というのが常であったそうだ。本当に不健康な奴らは、病気になろうと思ってもなれない連中のことである。ちゃんと病気になれるものは実は健康なのであるから、めでたい事なのであるというわけだ。病気になれるということは、それだけ賢い肉体を持っているということであるから、この優秀な肉体に精神を同調させてやれば必ずやまともに動くようになる筈である。その方法が断食というやつだが、仮に断食を試みたものの9割が失敗して昇天するとしても、西洋医学の100倍の成功率である。なぜなら西洋医学にあっては自然治癒による回復は1000人に1人にしか訪れないからである。10人のうち9人は死ぬから断食は効果がないといって世間がそう信じ込むのは、健康なものが西洋医学の治療を受けてもほとんどが無害なのに対し、断食などすれば半数以上が体を壊すからそう思い込んでいるだけだ。健康診断で健康と判断されたものの半数以上は病気なのだから断食すると体を壊すというのが真相かもしれない。


万葉の昔でも、「世の中を憂しとやさしと思えども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」の山上憶良(660頃~733)は関節リウマチであった可能性が高いという。『万葉集』の「沈痾自哀(ちんあじあい)の文」に記載されている一文がその証拠だそうだ。しかし、1492年のコロンブスによるアメリカ大陸発見以前で、関節リウマチと思われる人骨は、ほとんど発見されてはいないので、古代日本に関節リウマチがあったかどうかには疑問があるらしい。しかしまた、古代日本には現在とは異なったタイプの関節リウマチが縄文時代から存在していたという話もあるらしい。現在の関節リウマチの有病率は世界中どの国でもほとんど同じであるので、今の関節リウマチはウイルスによる伝染病が遺伝子に固定されたものだろうという説もあるらしい。その有病率だが、0.5~1%もあるという。とても多すぎて難病の指定は受けられないが、前回話したシェーングレン病よりもずっとつらい病気だと思う。寿命はそれほど縮まらないから、「さまよえるユダヤ人」みたいなものである。「ただで苦行できる」なんていうのは、関節炎の患者には言えても、関節リウマチの患者には当てはまらないだろう。

リウマチの語源は、古代ギリシャのヒポクラテスが関節炎に対して総称した「ロイマ」(流れる物質)に基づいている。おそらく脳から流れてくる粘液が滞った場所で炎症を起こすのだとヒポクラテスたちは考えていたため、その粘液が間接で渋滞を起こす病が関節炎であると結論付けたらしい。英語表記では[rheuma]となる。初めて関節リウマチの病名を報告したのは、イギリスの医師ギャロッドで1858年のことだったという。関節リウマチの症例を初めて報告したのはフランスのランドレ=ボーヴェといわれ、1800年のことであったそうだ。中世医学では痛風と関節痛の区別がはっきりしていなかったので、現在ほど正確な病名はつけられなかった。

発症年齢は30~50代が多いが、子供でも発症することがあり、特に16歳未満は「若年性突発性関節炎(JIA)」と呼ばれ、成人後の関節リウマチにつながりやすい。関節リウマチという病気自体によっても、治療薬の使用によっても、間質性肺炎(細菌によらない肺胞壁の炎症)を引き起こしやすい。特に治療薬の使用は急激な間質性肺炎を引き起こし重症化しやすい。しかし、治療によって早死にしてしまう運の悪い患者は1%程度だろうと思う。女性は男性の3~5倍罹患しやすく、90歳を過ぎても発症する場合があるという。高齢での発祥のほうが炎症が強く、関節破壊が強くなる傾向があるらしい。血液検査としてとして、リウマチ因子と抗CCP抗体の陽性者が関節リウマチ患者に比較的特徴とされるが、陰性であってもリウマチである場合も1割近くある。リウマチ因子とはリウマトイド因子と呼ぶのが正式な言い方だったらしいが、健常人でも高齢化すれば自然に陽性だという人が多いので、2割以上外れという検査で、お金を払うだけ無駄という感じだったらしい。その代わりに出てきたのが「抗CCP抗体」であるが、これでもはずれが多い。本書でも、ネットで医学関係を調べてみても、「抗シトルリン化ペプチド抗体」としか載っていなかったが、それでは「抗CP抗体」となってしまう。ウィキペディアには「抗環状シトルリン化ペプチド抗体」とあって、最初の「C]がどうやら[Cyclic]の略であるらしいことがわかる。しかしこの血液検査でも、陰性のものを正しく陰性と判別できる特異度は8割程度とあまり高くない。


関節リウマチと変形性関節炎は非常によく似た症例を示すそうであるが、リウマチ特有なのは滑膜炎から骨にまで穴をあける点らしい。進行状況を描いたグラフは株価チャートと非常によく似ているので、「投機のチャンス」の代わりに「治療のチャンス」とも呼ばれているそうだ。

関節リウマチで最も気を付けなければならないのが、膠原病の類に限らず通常の老化でも多少は当てはまりそうだが、肺病変である。間質性肺疾患や気管支拡張症等の気管支病変は、リウマチ肺といわれているそうである。ルノワールもしばしば患ったが、そのたびに快癒したらしい。治癒したのか、寛解程度なのかわからないが、人間の老いと死は必定であるのであって、元通り修繕されるなどということは不可能なのであって、治癒などという表現にもやや疑問がなくもない。まして難病の自然治癒などという言い回しはなおさらおかしいもので、擦り傷や切り傷の場合と同じような直り方が、長期の疾病に当てはまるだろうか。膠原病全般に沿うらしいが、治療に用いる薬あるいは注射というものは、TNFαとかIL6,T細胞などといった自然免疫本来に備わっている機能を阻害するものであって、そういう治療法では治癒などにたどり着く確率は極めて小さなものでしかないだろう。「気づき」による体質の改善というものが大事なのではないか。

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